3年計画の第2年度度に当たる本年度は、昨年度において収集したEUの移民教育関係資料及び異文化間教育関係資料・報告書、欧州審議会の異文化間教育関係資料・報告書の整理、分析を行った。 この分析により、概略、次のようなことが明らかになった。 以下に述べることは、EUへの統合が通貨統合をはじめとして一層現実化するヨーロッパにおいて、各国の教育を従来型の個別の国民教育のまま維持するのではなく、何らかの形でEUとしての共通の理解のうえに再構築しなければならないという、参加各国の課題意識に基づいての試みであるといえる。 1. 異文化間教育(intercultural education)は、ヨーロッパ域外からの移民の子どもたちへの一時的な教育的対応から、各国の国民の移動の自由化に基づく異文化間理解の必要性から導がれるヨーロッパにおける教育政策担当者の共通理解となりつつあること。 2. このため、多文化社会が現実化する各国にとって不可欠の教育であるということが意識されることにより、各国とも異文化間教育の実践とその評価を精力的に行っていること。 3. 異文化間教育には、一方で、言語的、宗教的、文化的マイノリティへの教育(これには移民に基づくマイノリティと旧来からの地域的マイノリティ、ジプシー、職業旅行者などのいわば歴史的マイノリティ)とマジョリティとしての受入側に対する教育の双方が含まれており、とくに最近は異文化共生の成功のためには後者の実現が大きく影響することが意識されていること。 次年度にはこうした成果をとりまとめ、報告書を作成する予定である。
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