平成9年度は、下記の成果を得ることができた。 第一に、市民大学のNPOモデルに関する先行研究・理論を総合的にレビューすることにより、既存の研究成果に不足する論点を洗い出すことができた。具体的には、国内については生涯教育学、社会教育学、成人教育学に加え、地域社会学における諸先行研究結果、国外については「生涯学習の構造化に関する比較共同研究」(平成4〜5年度、国立教育研究所)、「生涯学習の基本政策の現状・動向に関する国際比較研究」(平成6〜8年度、国立教育研究所)を中心とする共同研究結果などをレビューした。全体的な傾向として、NPO等の市民団体や民間非営利組織に焦点をあてた先行研究は少なく、本研究の重要性を確認することができた。 第二に、上記の作業をふまえて、本研究計画の作業枠組を構築するとともに、それに対するレビューを海外の専門家から受けた。具体的には、市民主体の成人教育活動に関する国際レベルの専門家であるブリティッシュコロンビア大学(カナダ)のK.ルベンソン教授を訪問し、討論等によるレビューを受けた。 第三に、既存の事例集・データベースや雑誌・文献での紹介記事等を活用し、国内における特徴的なNPO型の「市民大学」を選定し、それらに対するケーススタディを行った。ケーススタディの結果、市民主体の市民大学を創設するための社会政策レベルでの環境整備、発足した市民大学を維持・発展させるための運営上の方法論、地域をこえた各市民大学のネットワークなどが重要であることが判明した。
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