昨年度の引き続き、戦後に自由大学が開設された地域の資料調査及び関連資料の探索をすすめた。特に今年度は静岡県を中心に(三島や磐田など)フィールド調査(図書館・資料館・市町村史編纂室など関連施設)を実施し、資料の所在などの確認をすませたが、当初予定していた聞き取り調査などは、経験者がますます高齢化しており調査対象も限られてしまい十分な成果を上げることができなかった。今後の課題としたい。 また、自由大学そのものの実態把握のほか、自由大学運動が起こった地域のさまざまな文化運動と歴史的経緯などにも目配りする必要があることを認識し、具体的な地域に焦点をあわせつつ、資料探索や研究の視点などでは広域的な観点から分析をすすめた。 特に昨年度確認して分析が未了だった「自由新聞」 (1946年発行・東京・自由新聞社)と「自由沖縄」(1945年12月発行・東京・沖縄人連盟発行)を、新規購入したデジタルカメラで撮影し、パソコン画面で解読分析できる方法をとった。 両紙とも、「民主主義や自由・権利」などへの強い思いが紙面に現れており、1880年代の自由民権運動につながる意識をかいま見ることができた。戦後の物心両面にわたる混乱の中で、民衆が地域で新しい運動を誕生させ展開させていく時の原動力となったのは何だったのかをあきらかにしていくために、こうした新聞の考察が重要であった。 また早稲田大学で実施された「プランゲ文庫」の里帰り展でも、全国各地で戦後直後に発行された新聞や雑誌を確認し、当時の民衆がいかに学習意欲に燃え、その成果をガリ版文化として残してきたのかを知ることができ、自由大学分析に役に立った。
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