新石器時代から殷周時代までの動物骨と卜骨の出土資料についての集成は、中国から刊行されている『考古』、『文物』、『考古学報』の3雑誌について完了した。単行本として刊行されている正式な発掘報告書と『考古与文物』や『華夏考古』などの地方の雑誌については来年度の集成作業にゆだねざるをえないが、今年度までの集成をもとに検討したところによると、当初の予想通り、新石器時代にはブタが圧倒的に優位にあるのにたいして、殷周時代の国家に属する祭祀遺跡ではウシ、ヒツジ、ブタの順位になることを確かめた。 卜骨は、仰韶文化末期に出現し、新石器時代ではヒツジやブタの肩胛骨を用いていたが、二里頭文化のころから少しずつウシの肩胛骨に転換し、二里岡上層期にその転換がほぼ完了することが判明した。さらに、ヒツジやブタの肩胛骨は薄いために直接骨に灼をほどこしていたのにたいして、ウシの肩胛骨は分厚いために、錐で開けたくぼみに灼をほどこさざるをえなかったことを実物の観察で明らかにした。このような卜骨の加工の仕方がしだいに変化する過程について、今後、集成の際に注意する必要があろう。 礼書については、家畜にかんする『周礼』の経文・注・疏と『史記』の集成をほぼ完成させ、そのほかの文献についても関係記事を少しずつ拾い集めることができた。このような文献によっても、周代の国家では祭祀を目的としてウシとヒツジを組織的に管理していた状況を理解することができた。
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