研究課題/領域番号 |
09871065
|
研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
今村 峯雄 国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 教授 (10011701)
|
研究分担者 |
坂本 稔 国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 助手 (60270401)
斎藤 努 国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 助手 (50205663)
西谷 大 国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 助手 (50218161)
|
キーワード | 縄文土器 / 産地同定 / ベリリウム同位体 / 鉛同位体 / 南西諸島 / 加速器質量分析 |
研究概要 |
縄文土器における同一型式の地理的分布は人とものの動きを示しているが、これを区別して研究するには土器産地の同定が必要となる。本研究ではこれまで胎土による産地同定が難しいとされてきた縄文土器に対し、ベリリウム同位体を指標とする、新しいタイプの土器産地研究法の開発を行った。すなわち、土器原料となる粘土層ごとに、地殻起源の同位体Be-9、と宇宙線起源の同位体Be-10の各濃度に変動があることに着目し、土器胎土中の濃度分布の特徴を、それぞれ、ICP-MSと加速器質量分析で測定し調べることにより、実際に九州・南西諸島の縄文前期の土器をモデルにしてその有効性を検討した。 その成果の概要は以下の通りである。 (1)熊本・沖縄本島・鹿児島出土の資料は独自のベリリウム濃度分布範囲を示し、その同位体比は、粘土母体の堆積生成環境がそれぞれに内陸性、海洋性、その中間的な存在であったことを示す。 (2)土器原料となるべき粘土をあまり産しないとされている南西諸島(沖永良部島、奄美大島、宝島)では、ベリリウム同位体比は海洋性-中間的分布となったが、そのベリリウム濃度はさまざまな粘土資源を利用したことを示唆する拡がった分布を示す。 (3)同位体濃度分布は土器型式より地域性を反映している。 (4)奄美大島・沖永良部島・宝島からの各1個は、異なる土器型式をもつが、ベリリウム同位体濃度・鉛同位体の5つの指標値がほぼ完全に一致した。このことは同じ粘土資源を利用して複数の型式が生産されたこと、粘土をあまり産しない地域では、あきらかに広域の土器交易が行われていたことを示唆する。 このように、ベリリウム同位体を指標とする新しい土器産地推定法の有効性を確認した。現在、現地の粘土層と土器胎土の関係を比較検討する作業を進めつつあり、本法の有効性を更に詳しく追及してゆく計画である。
|