本年度の研究は、研究代表者による前年度の研究期間に蓄積したソシュール原資料のデータをもとに、動的概念マップの手法を取り入れながら、記号学的ナレッジベースの構築を目指すことから始まった。多量のデータのリンク形式を試行錯誤で模索し、最終的に行き着いた結論は、動的概念マップと組み合わせたナレッジベースの構築こそが有効であるという点である。 この方向性による研究は、世界的に見てまだ端緒についたばかりなので、比較的小規模でありながら、重要度の高いデータをもとに構築することが賢明であると判断した。この判断に基づき、小規模ながらのデータリンクを試みたところ、予想以上の成果が得られた。今後の研究課題は、以下の三点である。 (1) 未構築のテキストデータとソシュールの原資料のグラフィックデータの立体的リンクの完成。 (2) 記号学的概念マップの手法の確立。 (3) テキストとグラフィックデータの立体リンクへの概念マップの適用。 このうち、最も困難を極めることが予想されるのは、(2)の概念マップの作成である。単に近似的な概念だけではなく、反対概念、上位概念、下位概念などが有機的に連関するようなアルゴリズムを組みたてて、実際に稼動するかどうかを検証することは決して容易なことではないが、ニューラルネットワークの手法を応用しながら、概念を学習させるナレッジベースの試みを、是非とも実現化させるのが今後の課題である。
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