今年度は主として三つの作業を行った。 まず、海外の研究者から迅速に情報を入手するため、インターネット用にモデムを内蔵したパソコンを本研究の申請者の研究室に設置し、研究環境を整備した。現在、情報交換のためのネットワーク作りに取りかかっている。 次に、国立国会図書館編『明治・大正・昭和翻訳文学目録』、東京大学文学部編『翻訳書目録』、吉田精一編『現代日本文学年表』に拠り、19世紀末から20世紀初めの日本でのロシア文学翻訳・紹介の実態を調査した。作業は現在進行中であり、来年度も継続して行う。 第三に、既に取りかかっていた「日本におけるアンドレーエフ受容」の研究を手がかりとして、夏目漱石と森鴎外のアンドレーエフ受容について調査中である。この二人の作家のアンドレーエフ理解が受容テキストとどのような関係にあるのかを確認し、今回の萌芽的研究の方向づけにしたいて考えている。 どの作業も進行中で、まだ結論が出ていない段階であるが、来年度にはある程度成果が期待できると思われる。翻訳、紹介、評論等の資料の中に受容の全体的な流れを読み取りつつ、二・三の作家について具体的な考察を行うことによって、近代日本におけるロシア文学の受容の特徴を明らかにしたいと考えている。
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