研究概要 |
本研究は,コーカサス地域の言語であるグルジア語およびアルメニア語の文法を再考し記述するとともに,両者のような非ラテン系・非漢字系文字の言語の情報を汎用性のある電子テキストで公開する方策を探るものである。第一の目標は文法の概要を記述しなおすことであるが,問題点は旧ソビエト連邦内で話されている両言語の文法が主にロシア(語)的な観点から記述されていることである。欧米の研究者による数少ない文法概要の記述にしてもその方法は様々である。そこで,まずグルジア語に関していくつかの文法書の内容をまとめる作業を行い,さらに学習書を参考に何か重要な文法項目として取り上げられ,それらがどのように教えられているかを考察した。研究者の言語学的背景や想定される学習対象者の母語の違いから色々な提示方法が認められた。また,従来とは異なる(例えば日本語的な)視点からの新たな記述が可能である文法特徴もあった。一方のアルメニア語の文法記述において西洋的な観点は有用であるが,学習書などでも異なる教授法が見られ,この言語の文法の再考作業は進行中である。本年度の作業は当該言語をラテン文字転写せずに原語の文字を用いて電子ファイル化したが,従来の文字コード体系を基盤とするフォントを用いて表示・印字を行った。世界の文字に独自のコードが割り振られている新しい規格であるUnicodeへの移行作業を準備中であるが,Unicodeが部分的に採用され出したばかりのWindouws95などのパソコン用OS上の日本語アプリケーションでは「特殊文字」の取り扱いが不完全であることが明かになった。来年度は,本研究のもう一つの課題である非ラテン系・非漢字系文字言語の電子テキスト化の研究を中心に,現状の技術でも十分活用でき,かつ将来性を持たせるにはどのような形で電子テキスト化するのが最適であるかを当該言語のデータベースを作成しながら考察する。
|