研究課題の内容にそって、国内外の文献収集、研究会開催、調査等を実施した。 1.まず、最近アメリカ合衆国の自然資源管理のうえで最も重視されるエコシステム管理に関する検討を行った。その結果、森林局、土地管理局、野生生物局をはじめとする多数の省庁が規則・通達によってエコシステム管理原則を定め、環境影響評価においても生物多様性や生態系への事業の影響を重視する傾向が顕著であることが判明した。しかし、生態系管理には、知見やデータが不足で不確定・未知の部分が多く、実際の行政の現場では行政裁量の余地が大きいことから、住民が裁判等の手続を通してその中身の適正さを争うことが実際には困難であることなどが判明した。また、合衆国会計検査院(GAO)の報告では、依然として省庁間協力に問題のあることが指摘されている。今後は、さらに事例を収集し、エコシステム管理をする際の実際的な問題・事務処理上の問題を検討する。 2.国内については、環境法実務研究会を主として在京の研究者と協力して組織し、環境影響評価制度の研究を集中的に実施した。その成果は、判例タイムズに掲載中である。また、私の指導する若手研究者を中心に研究組織を学部内に組織し、その成果を、今年度の環境法政策学会分科会(6月)で報告し、さらに200頁程の図書として出版する予定で作業を進めている。 3.国内調査では、河川、湖沼を中心に、釧路湿原、函館市松倉川、千葉県手賀沼、船橋市三番瀬などについて現地の調査、行政機関の訪問、地元住民との討論などを行い、広領域の環境問題を生態系管理という観点からをどう管理するか、その際、関係する多数の自治体、官庁、住民の利害等をどのように調整するかを検討した。
|