1. 今年度は、まず環境影響評価制度を取りあげ、その中に生態系的な視点を組み入れる方法を検討した。生態系・生物多様性保護は、最近の環境基本法・環境基本条例にの中に明記され、環境影響評価における評価項目とされている。しかし、これまでなされた生態系のアセスメントは、オオワシ等の代表的な種に対する影響をもって生態系への影響と推論するなど、きわめて大ざっぱなものであった。今後、さらに生態系リスクの視点を取り入れ、リスク管理と環境影響評価との統合の可能性を検討したい。またより早い段階における生態系への影響を考慮する手法としての戦略アセスメントに注目し検討作業を進めた。 2. 日本では、カモシカ、エゾシカの被害が急増し、個体数コントロールと鳥獣保護法改正が具体的日程に上がっている。そこで、シカコントロール、生態系復元の手段として合衆国で実施されたオオカミの導入に着目し、意義、手続、アセスメントの内容などを検討した。オオカミ導入に伴う家畜被害の補償については民間団体による基金が設けられたおりやや状況が異なるが、補償額の算定等に関して有益な示唆を得ることができた。また、合衆国では、サケ、在来種、絶滅種の復活が大きな課題とされており、生態系管理の観点から重要な課題を提供している。これらの問題にも視野を拡大し、資料収集に努めた。 3. これまでの研究の中間総括と成果の公表を、共同報告「生態系管理の現状と課題」(98年度環境法政策学会、明海大学、6月27日)において行った。今年度も、単独報告「アメリカにおける自然保護の動向」(99年度環境法政策学会、福岡大学、6月19日)において行う予定である。
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