本年度は、研究の中間まとめとして、アメリカ合衆国における生態系管理の基調となっている流域管理の具体的仕組みについて検討を重ねた。合衆国の資料収集にあたっては、マサチューセッツ州、ワシントン州を対象に選び、資料収集に努めた。その結果、東部と北西部では差異があるが、小規模の住民組織・環境団体が連合し、かなりの決定権限を付与されながら流域管理計画の作成に努める一方、自治体が小規模の土地の買い取り、事業への補助などのシステムを設けていることが判明した。流域管理システムから、日本における広範囲の生態系管理に対応する行政組織のあり方に関する有益な示唆が得られたものと解される。同時に生態系管理を科学的に進める方法としての生態系影響評価の検討に努め、多数の文献を渉猟し終えた。また、具体的成果として、現時点における環境影響評価制度の到達点と今後の問題解明のための基本的な視座を、東京在住の研究者等との研究会を通して得ることができた。その結果は、畠山編著のモノグラフィーとして刊行される予定である。
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