研究概要 |
1.研究実施計画に挙げた、インターネットによるLender liabililityに関する判例、図書、論文の収集という点では、本年度の研究は満足すべき成果を挙げることができた。即ち、昨年度、研究計画のレビューをして頂いたUC Berkeley,School of Lawの好意により、同校の図書館のデータベースにインターネットを通じてアクセスをすることが許され、その文献目録を入手できた。その検索結果として、アメリカにおけるLender liabilityの先例を発見することができた。2.それは、State National Bank of El Paso v.Farah Manufacturing,Inc.,678 S.W.2d661(1984)である。<事案>Farahが代表取締役(以下、代取と略記)を努める会社で労働争議が起こり、会社が多額の損失を被ったため、彼は代取を辞任した。労働争議が和解に達した後、上記銀行は、彼が代取として当該会社に戻らないことを条件に、二千二百万ドルという多額の融資を行った。しかし、会社の損失が続いたため彼は代取に復帰しようとしたが、銀行が融資者としての地位を利用してそれを阻んだ。結局、彼は代取に戻ることに成功し、会社の業績を回復させることにも成功した。そこで、彼は当該会社に上記銀行を訴えさせ、第一審の陪審は千九百万ドルの損害賠償を上記銀行に命じた。そのため銀行が控訴した。しかし、控訴審も銀行による詐欺、経済的脅迫等の訴因を認め、銀行に約千八百六十四万ドルの損害賠償を命じた。3.本件は、アメリカ法では会社更生法の問題としても論じられている。即ち、支配的地位を乱用した債権者は、債権回収において劣後するだけでなく、債務者に対する損害賠償責任をも問われることがあるという論点においてである。この点において、私はLender liabilityとアメリカ破産法との関連をも見いだすことができた。4.今後は、収集した文献の分析を急ぐと共に、本年度に実施できなかった日本の有識者からの情報収集にも努めることにしたい。
|