研究概要 |
ニューラル・ネットワーク用ソフトウェアの操作方法を習得したのち,人間行為介在事例に限定して,判例ごとに,判示された(すなわち,裁判所によって認定された)事実の特徴を,いくつかの項目(たとえば,罪名,介在者が誰であるか,介在行為の故意・過失,介在行為の種類など)について数値化したうえ,これらを入力パターンとし,因果関係有無の判断を期待出力値として,ソフトウェアを作動させた。 その結果,現在のところ次のようなことが判明した。すなわち,1.これまで事案の分類として用いられていた「故意行為介在型」「過失行為介在型」「逃避過程転倒型」などの情報を入力パターンに含めると,それによって出力値がかなり限定されてしまうこと,2.それらの情報を除去して入力パターンを作成しようとすると,事案の数値化がかなり困難であること,3.因果関係が肯定される事例は多いが,否定される事例が少ないため,ネットワークの訓練方法に工夫が必要であること,などである。このうち,1.は,それらの(いわば直観的な事案分類が,事案の分類としてかなり有効なものであると同時に,因果関係の有無に関する結論に対しても大きな影響力を有すると考えられることを示唆していると思われる。 来年度は,今年度明らかになった2.,3.の問題をどのように克服すべきかに配慮しつつ,さらに事例の範囲を広げて,研究を続けて行きたいと考えている。
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