本研究の目的は、環境的に持続可能なエネルギーステムのあり方を明らかにし、その実現に対する規制緩和の可能性と限界を明らかにすることであった。もっとも定量的な分析は難しいため、本研究は定性的な考察にとどまった。 まず、環境的に持続可能なエネルギーシステムのあり方については、3E(経済、エネルギー、環境)の調和という視点が重要である。この視点に立つと、特定のエネルギー源に過度に依存するのではなく、エネルギーベストミックスの考え方が出てくるし、これまでのように大規模・集中・供給管理のエネルギーシステムだけでなく、小規模・分散・需要管理のシステムも必要になってくる。そして、そうした考え方やシステムの実現には、政策介入による誘導だけでなく、規制緩和による競争促進(とくに参入)も有効な手段と考えられる。このことは、主要エネルギーである石油の価格がほぼマーケットで決められていることや、電力をはじめとするエネルギー産業の規制緩和が世界的な潮流になっていることとも適合する。ただし、日本のエネルギー海外依存度の高さやアジア諸国の原子力発電への熱心さを考えると、安全保障における国家の役割(とくに危機管珊や地域協力の枠組みの重要性は大きい。 本研究においては、エネルギー政策決定における合理性と民主性、石油産業における規制緩和の政策プロセス、原子力発電所の新規立地におけるNIMBYシンドローム自治体における住民投票など)などにとくに焦点を当て、現地調査(見学と関係者へのインタビュー)と文献研究を通じて、今後のエネルギーシステムのあり方に対する規制緩和の考え方を整理した。
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