1、 体制移行諸国において、なぜ商品先物市場の機能が必要になるのかを、民営化ならびに財政支出との関連で考察することを目的として研究を行った。その結果、民営化をつうじて大規模農業生産者が生産活動を行い、かつ食品加工業者が効率的ならびにリスクの軽減が可能な仕組みを求めていることが明らかとなった。また財政支出削減のため、政府は農産物に関する均衡価格を求めている状況が明らかとなった。商品先物市場の標準的な機能によって供給出来る働きである。ただし、現在のところ、とりわけ農業生産者の置かれている現状からみて、そうした経済的要請が政治的に実現可能な事態となっていると判断することは困難であろう。したがって、(1)体制移行諸国における商品先物市場が効率的市場と判断出来るかどうか、政治的に歪みが導入されているかどうか、(2)体制移行諸国とりわけポーランド、ハンガリーとEUとの間の農業政策の調整をどう展望出来、どう経済的合理性が導入されうるのか、の2点の検討が今後の課題となると思われる。 2、 価格統計の収集の困難が比較的小さいブダペスト商品取引所については、価格に関する統計を収集し、時系列分析によって市場の効率性の検定を行うことが可能である。本研究でも、いくつかの商品について効率性の検定を試みた。その結果、効率的市場と判断される商品および判断されない商品が存在した。この点はなお統計の整備を行い、かつ上記1で述べたとおり、ハンガリーならびにEUの農業政策との関連のもとに検討しなおし、適宜修正を加える必要があるように思われる。
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