本研究は、1970年以降のマレーシアにおける都市経済に焦点を当て、とくにその中でも「屋台(penjaja、マレーシア語で「屋台」)」について、従来のインフォーマル・セクターの研究の成果に加えて、フォーマルな形態としての側面も組み込みつつ、その経済的・文化的な面から、マレーシアの都市経済に占める位置づけを理論的に把握する分析枠組みの構築の試みと将来的な調査の方法を検討することを目的とした。 まず第1に「屋台」について、都市経済の中に位置づけて分析するために、どうした都市経済の分析枠組みがありえるのか、また従来のインフォーマル・セクターの議論とマレーシアの「屋台」への適応など、理論的な分析枠組みを検討を試みた。とくに開発途上国のインフォーマル・セクターに関する従来の研究の成果を組み入れながら、フォーマルな経営形態としての側面も組み込んで、マレーシアの「屋台」に適応できるような理論的な分析枠組みを模索した。つぎに第2に、クアラ・ルンプルの経済の構造を分析する中で、とくにそのサ-ヴィス産業の位置づけを把握して、クアラ・ルンプルにおける「屋台」の経済的な位置づけについて分析を努め、「屋台」の文化的・社会的な側面にも目を向けながら、マレーシアの都市における消費行動、都市文化として捉えようとした。そして、第3に、そうした分析視角から「屋台」に関して、将来的にフィールドワークを行うとしたら、どういった手法が考えられ、また実際の実行可能性はどれだけあるのか、など調査方法の具体的な検討を試みた。
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