平成9年度においては、まず旧東ドイツ地域において国有企業を民営化するための「特株会社」的なTHA(信託公社)が存続していた1985年末における最終統計の整理を行った。その結果いわゆる小規模企業・サービス産業においてはほぼ所期の計画通りの民営化が達せられたことが明らかとなった。また企業買収などでMBO・MBIなどのそれ自体としてはかなり高度な手法なのであるが、連邦政府が買収資金の保証をすることによって旧東ドイツに住む個人ないし小規模集団に比較的スムーズに所有移転が行われたのである。しかしながら大規模企業については、40%程度事実上清算されたのであり、産業分野によってはスムーズな所有移転が行われたのであるが、例えば化学産業分野においては依然として買収者との交渉が難航しTHAに存続せねばならなかったのである。また買収が実現した大企業においても買収価格の交渉において、THAが算出した数値とかけ離れ、かなり低価格で所有移転が行われたのが実態であった。また土地における「再民営化」については、50年前にさかのぼっての旧所有者と再引き渡しについてその所有証明書の信憑性などの検定などの困難性があり必ずしも所期の目的が達成されたとは言い難い面がある。その後THAを1996年より引き継いだBVS(統一特別財産管理庁)が引き継ぎ、同様の処理を行ってきている。BVSの管理の下、残された民営化部分の推進と、THA時における買収企業経営者との契約履行監視を行ってきている。ドイツにおける経済停滞現象の中で資本投下量・雇用創出においてかなりの企業が、BVSと再交渉の状況にあることなどの分析が今年度における研究進行状況である。平成10年度においては、BVSの状況と、民営化を達成する過程における旧国有企業が、どのような企業合理化を実施してきたかを中心にして分析することになる。
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