9年度の研究目的は、つぎの点にあった。すなわち、経済戦略のグローバルな展開にともない、研究開発の国際化が進むにつれて、本国と現地国との技術連関のメカニズムがどのように創出されるのか。換言すれば、研究開発のグローバルなネットワークが構築されるに連れてどのような技術連関のネットワーク効果が国際的に創出されてくるのかを数量的に明示することにあった。 9年度前期の研究では、まず日米の主要企業による研究開発の国際的展開を、科学技術論文と特許出願技術の検索から数量化を計ってみた。後期は、これらの検索によって得られたデータをさらに技術分野ごとに整理し、技術分類しなおす作業を行ってきた。9年度は、特に研究開発の国際化に関する先行研究が少ない分、理論的整理を並行的に行いながら、実証研究レベルでの分析手法を新たに開発し、最終的にはIBM社とNEC社を中心とした国際的な研究開発ネットワークの構図を明らかにした。また韓国三星電子社の国際研究開発体制の分析に関しては、郭 洋春氏(本学経済学部助教授)との共同研究が極めて有益であった。それらの成果は、98年5月に米国シカゴで開催されるAJBS学会年次大会において、Globalization of R&D and Its Implicationsのテーマで報告予定である。また「研究開発のグローバル化とネットワーク化」のタイトルで『デジタル情報ネットワークと産業社会』(共著、ミネルヴァ書房、98年3月、第4章)にも発表されている。三星電子の研究開発の国際化に関する分析は、「東アジア諸国の技術開発力は虚構か」(『雁は飛んでいるか』有斐閣、1998年9月予定、第4章所収)に掲載されることになっている。
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