研究概要 |
企業が現在あるいは将来に負担すべき環境コストは企業業績に重大な影響を与える可能性があり、認識・測定システムとしての会計の枠内に環境要因を取り込むことが要請されている。本研究の目的は、貨幣数値によって測定される情報として財務会計の枠組みの中に環境要因がいかに取り入れられつつあるかを、アメリカにおける環境負債をめぐる議論を中心としながら検討することである。 まずその前提として、アメリカにおける環境法規制について検討した。大気浄化法、水質汚濁防止法、資源保護回復法(Resource Conservation and Recovery Act:RCRA)などが制定されているが、環境負債に最も深くかかわっているのは、1980年制定の包括的環境対処・補償・責任法(Comprehensive Environmental Response,Compensation and Liability Act:CERCLA)、ならびに1986年に同法に大幅な修正が加えられて成立したスーパーファンド法修正・再授権法(Superfund Amendments and Reauthorization Act:SARA)である。 つぎに、これらの直接的規制による法的責務にもとづく会計基準について検討した。企業が将来負担すべき環境負債に関して、FASB基準書第5号「偶発事象の会計」があり、EITFは1993年「環境負債の会計(Accounting for Environmental Liabilities)」(Issue93-5:1993年)を公表している。FASBは1996年2月、Exposure Draft「固定資産の閉鎖あるいは除去に関する確定的な負債の会計」を、AICPAは1996年10月、Statement of Position96-1「環境修復負債」を公表した。 アニュアルレポートにおける開示事例の分析やFASBやカナダ勅許会計士協会へのインタビューならびにレビューは次年度におこなう予定である。
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