研究概要 |
1コンパクトシンプレクティック多様体に対する基本的な構造定理として考えられる一種の間隙定理に関する研究を行った.ここでいう間隙定理(予想)とは,シンプレクティック構造が偏極射影代数多様体から定まるものに,十分近ければ,実際にある偏極射影代数多様体に微分同相であろう,というものである.これは,小平の埋め込み定理のアナロジーであると考えられるので,シンプレクティック多様体の構造論のなかで,基本的なものである.まず,定理を定式化する,すなわち,上で述べた,「十分近ければ」が,何を意味すべきなのかを明確にするために,平行して行っているコンパクトケーラー多様体の射影代数多様体への変型に関する研究で得られた知見を検討した.その結果,偏極射影代数多様体(射影代数多様体と正直線束の対)ではなく,射影代数多様体と非常に豊富な直線束の対を考えるべきであることが解り,コンパクトケーラー多様体の射影代数多様体への変型に関する研究で行っている議論が,この問題に関しても有効であることが解った.次年度も,この2つの問題を平行して扱ってゆくべきであると考えている. 2シンプレクティック構造の新しい不変量として,小平次元,飯高のD次元のアナロジーを定義した.しかし,定義には,シンプレクティック構造と両立する概複素構造全てを考える必要があるため,定義から直接,不変量を求めるのは,射影代数多様体の場合を除くと,ほとんどの場合,極めて困難である.次年度の課題は,射影代数多様体以外のいくつかの例で,この不変量を求めることである.
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