研究概要 |
昨年度までの研究により,コンパクトシンプレクティック多様体に対する間隙定理は任意のコンパクトケーラー多様体が,射影代数多様体まで変型できるかどうかとういう問題と密接に関連していることがわかっている.さらに,これは適当な意味で十分に正な可微分直線束に価を持つ微分形式に対するディラック型作用素の重み付きL2評価に帰着されることが分かった.本年度は,この評価の証明の完成を第一の目標とし,あわせて,ネーデルによって導入された可微分同相な正則ベクトル束の対に対する不変量の,シンプレクティック多様体に対する類似を考えた. 1評価の証明 上で述べた多様体上の評価は,局所化することが可能で,複素ユークリッド空間上の標準的な計量をもつ正則直線東上のディラック型作用素の評価に帰着されることが分かった.特に,複素ユークリッド空間から原点を除いたところで定義された直線束の切断に対するディラック方程式の解の原点付近での増大度を調べることが必要になった.解を,古典的な特殊函数と比較することにより必要な増大度に対する評価を得た. 2ネーデルの不変量の類似 可微分同相な複素多様体の対に対しては,ネーデルの不変量の類似がドルボーコホモロジィ群の元として定義できることが分かった.コンパクトシンプレクティック多様体の場合に,ドラームコホモロジィ群の元として定義できないか検討した. 来年度コンパクトシンプレクティック多様体の場合に,ネーデルの不変量の類似から出発して概複素構造の特性類が定義できないかを検討する.
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