研究概要 |
物性物理の数学的構造の研究の具体的題材として、磁場を持つシュレディンガー作用素のスペクトルや固有関数の構造、シュレディンガー方程式の半古典極限、ランダムな磁場やポテンシャルを持つシュレディンガー作用素の状態密度関数の構造、多状態の粒子の散乱作用素の構造、等を研究している。 今年度の成果としては、以下のようなものがある。(1)ランダムな磁場を持つシュレディンガー粒子の状態密度関数のスペクトルの端点におけるリフシッツ特異性を証明した(2次元離散的の場合とユークリッド空間の場合。ユークリッド空間の場合の結果は投稿中)。(2)量子力学的粒子は磁場の効果によって局在しやすいことは物理的にはよく知られているが、固有関数の指数減衰の指数が大きくなることを厳密に証明した。(3)共鳴状態の近くで散乱作用素は特異的振る舞いを示すが、特にスペクトルシフト関数は階段状の関数に漸近的に近づくことを示した。 また、現在も継続中の研究としては以下のようなものがある。(1)2状態を持つシュレディンガー粒子の散乱行列の半古典極限の挙動を、相空間でのトンネル効果の評価を用いて調べる。(Andre Martinez, Vania Sordoni との共同研究)。(2)スペクトルシフト関数の手法を用いて、ランダムなシュレディンガー作用素の状態密度関数の連続性に関するWegnerの不等式の新しい証明を与える(Peter D. Hislop との共同研究)。
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