研究概要 |
流体現象を中心とした非線形現象に現れる種々の非線形偏微分方程式の可解性及び解の定性的性質を調べてきた.1997年度の研究成果は以下の通りである. 渦糸方程式に関しては,軸流を伴う場合も伴わない場合も,その初期値問題及び周期境界条件を課した初期境界値問題の時間大域解の一意存在が証明できた(Publ.RIMS Kyoto Univ.に掲載). 二相問題と自由境界問題が物理学上も数学上も興味あるこれからの重要な問題であるが,それに関しては次の4つの結果を得た.(1)渦なしの非圧縮性Euler方程式の二次元帯状領域における二相自由境界問題(深さが無限の時)の時間局所解の一意存在が証明できた(Mathematische Annalenに掲載).(2)非圧縮性Euler方程式(渦あり)の(1)と同じ領域での一相自由境界問題(深さが無限の時)の時間局所解の一意存在が証明できた(Adv.Math.Sci.Appl.に掲載予定). Stefan問題とも関連するが,相転位を記述するモデル方程式の解析が今後重要な課題となる.それに関しては,エネルギー最小化関数の等高線集合の平均収束(Comm.Pure.Appl.Math.に掲載予定)と二つの化学物質が高速で反応する現象をモデル化した二相自由境界問題においてその界面の正則性,界面速度(Comm.Partial Diff.Eq.に掲載予定)が求まった. 上記の様な解のさらに詳しい性質を調べるには何らかの対称性を仮定して常微分方程式に帰着するのが常套手段である.そのための基礎理論として,合流型超幾何関数の満たす全微分方程式系の不確定型特異集合のまわりでの解の漸近挙動について二つの結果が得られた(Intern.J.Math.及びJ.Math.Soc.Japanに掲載). (3)(1)と同じ幾何的性質を持つ三次元帯状領域における圧縮性Navier-Stokes方程式の自由境界問題(深さが有限の時)で自由表面に表面張力が作用している下での時間局所解と平衡状態の近くで時間大域解が一意に存在することが証明できた.現在投稿準備中である.(4)Boussinesq近似をした非圧縮性Navier-Stokes方程式に対する一相Stefan問題の古典解の存在が証明でき,現在投稿中である.
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