研究概要 |
P=NP問題への応用を主要な目的として,限定算術(Bounded arithmetic)の超準モデルMのブール値拡大M^B,およびgeneric拡大M[G]の構造に関する研究を行った.Mにおいて多項式サイズのBool式からなるBool代数のBのイデアルIがM_0-completeの時,M-generic over Iであるultra filter Gによる拡大M[G]を構成しその性質について調べた. P=NPを仮定すると,M[G]はS_2のとなることが証明された.従って,P≠NPを証明するためには,S_2のモデルにならないようにM_ 0-complete イデアルIを作ればよいことになる.そのようなイデアルの具体的な候補をいくつか見つけ,必要な条件を満たしているかどうか調べたがまだ結論は得られていない.この中でも特に有力と思われるのは,グラフのクリーク数,クロマティク数とM_ 0-inaccessible なMのカットから構成されるイデアルで,このイデアルが自明でない,すなわち1を含まないことが示されればP≠NPが証明されたことになることがわかった. またP=NPを仮定しない場合は,M[G]はS_2^1のΣ_1^b-partのモデルになることがわかり,ブール代数の拡大に従ってM[G]はだんだんとS_2のモデルに近づいていくことが示された.この結果はS_j^1の階層の分離問題との関係がありその方面への応用が可能である. ブール値モデルをオラクルの場合にも拡大することも試みたが,現在のところ成果があがるところまではいたっていない.
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