研究概要 |
有限半順序集合の理論は,散在的とも思える数え上げ問題を総括的に考察する際に極めて重宝であって,現代数学に現れる離散現象の研究を推進させる画期的な道具でもある.有限半順序集合の組織的研究はGian-Carlo Rotaのメビウス函数の仕事にその起源を有し,組合せ理論の現代的研究の根幹を成すが,昨今,多項式環のイデアル論,不変式論などの研究にも有限半順序集合の理論が有益であることが認識され,半順序集合の組合せ論と代数系の諸分野との境界領域における研究活動が徐々に推進されてきた.当該萌芽的研究の平成9年度における研究課題は,多項式環における単項式イデアルの有限自由分解について,計算代数的な構造理論を構築し,加えて,古典的な有限集合の組合せ論を有限自由分解の枠内で捕え,その精密化を探ることであった.当該年度における重要な研究成果の一つとして,多項式環におけるグレブナ-基底の理論を外積代数の枠内で再編成し,多項式環における斉次イデアルのHibert函数についての著しい結果である,いわゆるGotzmann永続定理の類似を外積代数において樹立するとともに,単体的複体の面の個数についての組合せ論的な特徴付けを与えるKruskal-Katona定理を代数的に解釈し,外積代数における斉次イデアルの極小自由分解に現れるベッチ数列の理論でKruskal-Katona定理を精密化することに成功したことが挙げられる.加えて,極小自由分解が線型あるいは純となる単項式イデアルの分類問題に挑戦し,純な極小自由分解を持つCohen-Macaulay半順序集合を組合せ論的に分類するとともに,殻化可能な有限半順序集合に付随する単項式イデアルのCohen-Macaulay型をその有限半順序集合のメビウス函数によって記述する公式を探究する足場を築いた。
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