研究概要 |
クェーサー/AGNと爆発的星形成の強い繋がりを説明する物理的メカニズムとして、星形成領域からの強力な輻射場による輻射摩擦によって、中心核を取り囲む回転ガス円盤から角運動量が効率よく抜き取られ,さながらなだれ的に中心に落ち込むという「輻射性なだれ」モデルを提唱し,このモデルに基づきクェーサーや活動銀河中心核の輻射流体力学的進化を調べた。まず,爆発的星形成領域の広がりが十分細いリングの場合について,「輻射性なだれ」の解析解を求めた。そして,この解を使って活動銀河中心核の輻射流体力学的進化を議論し,スターバースト銀河の観測と比較した。次に,爆発的星形成領域の広がりの効果を定量的に押さえるために,厚みをもったトーラス形状の星形成領域を考え,そこからの輻射によるなだれ効果を数値解析によって調べた。その結果,なだれの強さは,およそトーラスの厚みに比例することを明らかにした。この「輻射性なだれ」は,数pc-100pcの領域では,通常のα粘性による降着よりも速い。また,銀河中心のバ-不安定による質量降着は,数10pc程度までが限界であることがわかってきており,「輻射性なだれ」は,バ-不安定が効く数10pcまでと,α粘性が効く1pc以下の間を繋ぐ第3の質量降着メカニズムと見ることができる。
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