研究概要 |
清浄なAg(110)表面に酸素を約10,000ラングミュアー暴露して作成した2x1-Oおよび1x2-O表面の角度分解光電子分光スペクトル測定し,以下の結果を得た。 (1)2x1-O表面の作成は試料温度400K-360K,1x2-0表面は380K-360Kで行った。いずれもシャープな2x1,1x2構造を示すLEED像を得た。時には、2相の混在を示すLEED像が得られたが、その時の光電子スペクトルは2つの相からの寄与の和として良く説明できた。 (2)2x1-O表面については、これまでの報告と一致する結果であり、角度分解光電子分光スペクトルをLCAO解析して、Ag-O,Ag-Ag相互作用を定量的に決定することができた。 (3)1x2-O表面では、酸素の2p成分が主要な表面電子状態は、2x1-O表面の場合と異なり、(001)方向で分解を示さず、(110)方向でわずかに分解した。 (4)1x2-O表面のLEEDで、(0,1/2)スポット等が(0,1)スポット等とほぼ同じ強度で観測された。これは(110)Ag原子列が一列毎に欠落しているとすれば良く説明でき、また光電子分光スペクトルが(001)方向で分解を示さないこととも矛盾しない。 (5)以上の結果をもとにして、最表面の(110)Ag原子列が一列毎に欠落し、酸素原子は残った(110)Ag原子列のオントップ、ブリッジ、または三回対称位置にあるとする構造モデルを考えた。それぞれのモデルにたいして、2x1-O表面のLCAO解析で得たAg-O相互作用等を用いて、表面電子状態を計算した。実験結果との一致は満足するものではないが、オントップまたはブリッジ位置が示唆された。 (6)これらの結果は、1997年9月に開催された7th Int.Conf.on Electron Spectroscopy(Chiba)国際会議で発表した。
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