本研究の目的は、ファラディ法を原理とした世界最高感度の測定装置を開発することにある。古典的な帯磁率測定法であるファラディ法でスクイドを上回る感度が実現できたのはパルス強磁場を用いたためである。なぜなら磁性体にかかる力は基本的にっは磁場の自乗に比例して大きくなるからである。さて、本研究の目的はこのパルス磁場の発生周期と試料の振動周期との同調による振幅の増幅で高感度を目指す事であったが、一方で発生磁場の上昇は高感度化にはより有効であることは明らかであり、今年度はその発生技術に大きな進歩があったので、これを報告する。 帯磁率測定を高感度に行うために使うパルス磁場はロングパルスマグネットと呼ばれ、パルス幅が10ミリ秒から長いもので1秒近くである。そのためマグネットは銅あるいは銅合金線を巻いた多層ソレノイドである。このタイプのマグネットはこれまでの記録は73.4テスラであったが、今年度我々が開発した新しいマグネットでは80.3テスラを発生した。この開発のポイントは磁場発生時にかかる応力をコイル線材だけで抑えるのではなくて、マルエージング鋼を補強材として使いコイル全体の有効強度を上げる点にある。新しい記録を作ったマグネットは、一層のみの補強であり、二層以降を補強することによって得られる磁場の値は計り知れない。今後、この技術を帯磁率測定用マグネットに応用することで、感度が一桁以上は上昇することが期待される。
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