^4He超流動薄膜上に浮かぶ^3Heの間には、^4膜厚の4乗に逆比例する引力が存在する事が、以前の我々の研究から分かっている。これは、^3He-^4He二重膜が、^3He原子間引力を広い範囲でコントロールできる魅力的な系であることを示している。今年度、我々は強い引力のもとでのフェルミ系に焦点を当て、次の二つのテーマを研究した。それぞれについて概要を記す。 1)強い引力を持つFermi系の集団励起スペクトル フェルミオンの運動方程式に対し、拡張された乱雑位相近似(generalized RPA)を適用し、集団励起スペクトルを計算した。結果の長波長部分は、弱結合領域ではAndersonモードに、強結合領域ではBogoliubovモードにそれぞれ一致する音波的モードになることが分かった。ここまでは他の研究でも知られていることであるが、新たに、任意の次元、任意のフェルミオン濃度に対し、短波長部分のスペクトルを計算し、ロトン的な励起を得た。得られたロトンギャップはフェルミオン濃度の増加とともに減少する傾向を示し、^3Heの圧力印加による結晶化現象と辻褄の合う結果となっている。(日本物理学会1997年秋の分科会口頭発表6pK2) 2)超流動と密度波の共存状態 強い引力を持つフェルミ系には、超流動秩序と結晶もしくは密度波秩序という二つの長距離秩序が共存する可能性がある。非対角秩序と対角秩序の共存は、高温超伝導の本質を考える上でも非常に重要である。我々は引力ハバ-ド模型に対して、これら二種類の秩序をもつGutwiller型の変分波動関数を考案し、Metzner-Vollhardtらの無限次元技法を用いて基底状態を調べた。その結果、half-filling近傍に密度波と超伝導(超流動)の共存状態が存在することを見だした。超伝導ギャップは相互作用の増大とともに始めは増大し、やがて減少に転ずることも分かった。この結果は、BCS状態からBose-Einstein凝縮状態への移り変わりを表すと考えられ、興味深い。 (1997年、豪洲で開催された国際会議Recent Progress in Many-Body Theoriesにおいて発表)
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