以下の事項について研究を行った. 1.サンプルの作成 ガラス基盤にアルミニウム膜を1000Åほどスパッタ蒸着したものに光リソグラフィーの手法を用いて不規則な縞々模様にアルミ膜を残して第3音波の散乱体とする。ガラスとアルミの境界のところでファン・デア・ワールス力が急激に変化するのが散乱の原因となる。不規則な媒質における音波の伝播を調べるためにはその統計的な性質を議論しなければならないので、十分な統計を得るためにおおくのサンプルを用意する必要がある。 2.透過スペクトルの測定 透過スペクトルの測定はパルス波形を上記の不規則媒質中に入射し、媒質を透過してできた波形のフーリエ変換から求める。このとき有限な時間記録される波形の両端の処理を適切に行うことが必要である。現在、ウエーブレット変換を用いることを検討中である。 3.2次元への拡張 現在までのところ残念ながら十分な数のサンプルにおけるデータが取れていない。今後データを蓄積し、十分な統計を得るように努力していく。合わせて、1次元不規則系だけでなく2次元不規則系での実験を行う予定である。本研究によって今後の研究の芽を育てるという萌芽的な性格は遺憾なく発揮されたものと考えている。
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