地球の磁気圏は、プラズマ密度が希薄なため、現代のいかなる宇宙計測技術を駆使しても撮像観測は不可能であるといわれている。しかし、GEOTAIL衛星の直接計測データを統計的に解析し、磁気圏尾部の構造を可視化できるのではないかという期待のもとに研究を進めた。特に、磁気圏尾部に大規模な構造変化がもたらされるサブストームの開始する前後の時間帯に着目して解析を行った。現象の開始時刻はPi-2地磁気脈動を用いて決定した。先ず、地球半径の30倍から200倍程隔たった磁気圏尾部で観測された多くの現象を統計的に重ね合わせる解析を実施した。そして、「プラズモイド」とよばれる高温プラズマの塊が磁気圏中を高速で駆け抜ける様子を可視化することに成功した。その際、プラズモイドの境界層に沿って高温・高速のプラズマ粒子が流れ、特徴的な構造を形成することなど、興味深い性質を見いだした。次に、比較的地球に近い磁気圏尾部についても、同様な解析を進めた。こちらの研究では、地球半径の20倍程隔たった領域を挟んで、遠い所でプラズモイドの発生、また、地球に近い所で、北向き磁場の増大することを確認した。両者の変化が同時に起こることは、地球半径の20倍程度の磁気圏尾部で、磁気再結合が起こっていることを強く示唆するものである。さらに、プラズマ圧と磁気圧の和として定義される「全圧」がサブストームの進行とともに、減少してゆくことが見いだされたが、これも時間発展を含む磁気再結合モデルの予想と良く一致する変化である。ところが、面白いことに、その中間領域における電場強度の顕著な増大が見られなかった。この点が、従来の磁気再結合モデルと異なる内容であり、新たな問題提議を行うことができた。
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