本年度の研究で得られた主な成果は以下の2点である。 ○ビームリング分布による線形分散関係:ビームリング分布は磁場に平行と垂直方向の自由エネルギーをもつ最も簡単な分布であるが、これによる波動励起作用を相対論的効果を含めて系統的に解析し、今後の解析の基礎となる議論を行った。まず、電子・陽子プラズマ中で、電子ビームが静電的プラズマ波動を励起する過程を考察した。これは、よく知られているランダウ共鳴による不安定性の他に、サイクロトロン共鳴によっても波動励起が起こる。非相対論的な場合にはランダウ共鳴の場合が支配的であるが、ビームが相対論的エネルギーを持つ場合、これまで余り重要視されていなかったサイクロトロン共鳴による励起のほうがむしろ支配的になることを示した。この物理的な理由を考察し、また2次元粒子コードによる計算機実験により、波動の励起チャンネルの比較および波動間の相互作用を考察した。 ○リング分布によるゼロ波数モードの励起:磁力線に対して垂直方向にエネルギーを持つリング分布により励起される波動を、電子-陽電子プラズマ中の線形分散関係を用いて考察した。よく知られているサイクロトロン不安定性によるアルフヴェン波動、リング分布との異常共鳴による右偏波の電磁波動の他に、ゼロ波数に成長率のピークを持つ、非常に興味深い電磁的な波動が、ダウンシフトしたサイクロトロン周波数近傍に励起されることを示した。この波動の成長および非線形発展過程を、粒子シミュレーションを行って議論した。この不安定性は、波動がリングのうちで、波動にエネルギーを与える部分とのみ共鳴することにより引き起こされることを明らかにした。
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