大気のない天体表面においては微小隕石の衝突や太陽風粒子・宇宙線によって、表面物質がガラス化する等の変質が生じる。そのため、観測される反射スペクトルは、(1)反射率の全体的な低下、(2)鉱物による吸収帯が浅くなりスペクトルが平坦化、(3)紫外領域のスペクトルの相対的な低下(赤化)という傾向を示すことが月試料の分析からわかった。 本研究は、微小隕石衝突をシミュレートするため、衝突と同等の時間で加熱するため波長1064nm、バルス幅6〜8nsecのバルスレーザーを用いて新たに実験装置を作成した。自動XYスデ-ジ上に小型真空チエンバーがあり、これを動かすことによって試料表面の1平方センチメートルの範囲にレーザーを照射する。レーザー光の直径は約500ミクロンである。用いた鉱物は75ミクロン以下の扮末にしたかんらん石および斜方運石である。また太陽風粒子の影響を見るため、原子力研究総合センターにて、1MVのプロトン照射を行った。 プロトン照射実験を行った試料については、かんらん石(Fo91)とEn85の組成を持つ輝石において可視光領域でわずかに反射率の減少が起きた。レーザーによる加熱実験ではブロトン照射よりも顕著な変化が見られた。エネルギーを変化させてかんらん石を加熱した実験では、1mJの場合には変化は起こらなかったが、エネルギーを高くするほど反射率の減少は大きくなった。全体として赤化の傾向を示す。
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