本研究では、中国大陸の砂漠地域の風成堆積物や黄土の運搬・堆積作用を通しての均質化過程を検討し、中国大陸の上部地殻の平均化学組成の推定を行う。本年度は、中国西部のタクラマカン砂漠の風成堆積物について、堆積学的・鉱物学的・地球化学的研究を行った。主な成果は次の通りである。 1.サウジアラビア等の砂漠の風成堆積物と比較すると、タクラマカン砂漠の風成堆積物は、石英の割合が相対的に少なく、長石・方解石が多く含まれる。また石英粒子の円磨度は、タクラマカン砂漠の方が悪い。このように、タクラマカン砂漠の堆積物は、堆積学的には未成熟であることが明らかになった。 2.タクラマカン砂漠の、西部、南部、中央部の3つの地域の風成堆積物において、鉱物組成および化学組成に地域差は認められないことが示された。 3.堆積学的に未成熟であるにもかかわらず、鉱物組成・化学組成において地域差が認められない観察事実から、タクラマカン砂漠風成堆積物の均質化の原因として、供給物質の周辺の山脈における氷河による堆積・運搬過程での均質化の重要性を指摘した。氷河作用により均質化された物質が砂漠に供給され、砂漠内部における風成作用によりさらに均質化が進行したと考えることが妥当であることを主張した。 4.タクラマカン砂漠堆積物においては、黄土の構成粒子の主体となる10-40μmの粒径の粒子が非常に少ないことを指摘した。さらに、この粒径の粒子の化学組成が、砂漠堆積物と黄土では異なっていることも明らかにした。この化学組成の違いの原因を明らかにすることが、中国大陸の上部大陸地殻の化学組成の推定する際に重要であることを指摘した。
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