研究課題/領域番号 |
09874112
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
百瀬 孝昌 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10200354)
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研究分担者 |
志田 忠正 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60025484)
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キーワード | 量子固体 / 固体水素 / マトリックス / 高分解能 / 分子イオン / 赤外分光 / ラマン分光 / フリーラジカル |
研究概要 |
本研究の目的は、固体パラ水素マトリックス中では捕捉した分子が気相と同程度かそれ以上の分解能で分光ができるという特徴を生かして、固体パラ水素分子中に捕捉した電荷を持った化学的活性分子の赤外および可視・紫外領域の高分解能分光を行うことによりその構造や電子状態を明らかにすると共に、固体内での反応性を動力学分光法により明らかにすることにある。特にプロトン付加した分子イオンおよびラジカルイオンを研究対象にして、その分光を行うことを試みている。本年度はまず固体水素中にイオン分子を生成する方法として放射線照射法の確立を行った。固体水素を放射線照射することによりまず媒質である水素分子がイオン化され、生成したH_2^+はその後、電荷移動反応H_2^++H_2→H_2+H_2^+とイオン分子反応H_2^++H_2→H_3^++Hとを競合的に起こすと考えられるが、前者で移動する正電荷はその一部が単離した溶質分子をイオン化してラジカルカチオンをつくると期待される。一方後者で生成したH_3^+は回りの水素分子とH_3^+(H_2)_nというクラスターをつくり安定化すると見られるが、その一部は溶質分子と反応して水素陽イオンの付加した分子を生成すると考えられる。そこで、まず純粋な固体水素の結晶に放射線照射をすることにより起きるプロセスを赤外分光法を用いて観測した。系内にイオンが生成するとその強い電場によって水素分子が赤外活性になる。このことを利用して、水素の吸収変化を照射前と照射後で比較したところ、放射線照射によるイオンの生成が確認された。また水素の吸収の偏光依存性などから、固体内のにイオンの分布を得ることができた。イオンの分子構造を知るために現在さらに赤外スペクトルを詳しく検討しているところである。
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