研究課題/領域番号 |
09874114
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松本 卓也 大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (50229556)
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研究分担者 |
北浜 克煕 大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (20029903)
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キーワード | 走査トンネル顕微鏡 / 分子移動 / 電界イオン化 / アデニン / チタン酸ストロンチウム / 電気双極子 / 光励起キャリア |
研究概要 |
走査トンネル顕微鏡を用いて、表面吸着孤立有機分子の観測と分子移動操作を行い、分子移動機構を詳細に検討した。DNAの塩基分子であるアデニンをSrTiO3(100)還元表面に吸着して、定量的な分子移動実験を行った。探針と試料間の距離、バイアス電圧、トンネル電流の間の関係を調べて、分子操作時における表面のアデニン分子にかかる電界の強さを求めた。その結果、分子の移動及び脱離の確率は、バイアス電圧やトンネル電流には依存ぜず、電界の強さのみに依存することがわかった。これは、分子の移動や脱離の過程に電気双極子が関与していることを強く示唆するものである。そこで、試料-探針間のトンネリングの障壁高さを分子分解能で測定し、吸着分子と表面の間に生じる電気双極子や分子の分極による誘起双極子を定量的に求めた。これらの値から、表面エネルギーや脱離イオン化過程の活性化エネルギーを計算すると、実験から求めた分子移動・脱離の電界閾値と極めてよく一致した。この成果は、吸着表面の電子状態や分子のイオン化ポテンシャルなどから、分子移動・脱離に必要な電界の強さ等の条件を、ある程度、非経験的に見積もる手法を示したと言える。 さらに、光による表面反応の準備として、Si(100)2×1表面上に吸着した亜鉛フタロシアニンおよびコロネン分子における光励起キャリアの振る舞いについて、研究を行った。その結果、シリコンと分子軌道を有効つくるような配置の分子だけが、光励起キャリアのトンネリングに関与することがわかった。
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