研究概要 |
1. ホスト-ゲスト相互作用を基盤とする「FABイオン化によるエナンチオマーホスト同位体標識マススペクトロメトリー」を提案した。質量分析法により光学純度評価を達成する方法論を、世界ではじめて実験データで示した速報(Chem.Commun..1998)が掲載されたことが成果の第1点である。澤田正實(分担)が最近の総説(Mass Spectr om.Rev.,1997)で有用性を予言した方法論が、時をおかずして実現した。言い換えれば、マスでも光学純度がわかる時代が来たといえる。実験的には、光学活性ゲスト試料の選定と重水素標識光学活性ホストの合成、超微量FABマス測定のサンプリング条件検討に時間が費やされた。成果の一部を、日本化学会春季年会、質量分析総合討論会をはじめ国際会議でも多数口頭発表し、その成果の一部を現在投稿中である。ホスト構造の分子設計、ゲストとの組合せ、イオン化法、測定技術、等、今後一層の検討の余地は多い。 2. 他方、気相でのホスト-ゲスト相互作用のルーツを探るには、イオン-双極子相互作用に関する活性中間体の構造と反応性に関する基礎研究も不可欠である。反応過程に新規な転位反応を含むことも多く、同位体標識を含む中間体イオンの発生法の探索、注目のイオン発生に好適な基質合成も実施した。その結果、メタステーブル的に且つ競争的に発生させた互いに異性体関係にあるイオンの構造を、大型逆配置磁場型質量分析計(磁場先行型)のイオン光学の特徴を活かして、異性体識別できる実践例を前年につづいて別の系でも新たに見だし、成果の一部は国際的にも評価の高いcirculationの良い質量分析専門誌(Int.J.Mass Spectrom.lon Proc.)に掲載が決定した。 以上、徐々にではあるが、萌芽的研究たる本研究課題の所期の目的を達成する方向に研究が展開しつつあると思われる。 資料別添
|