ガドリニウムポルフィリン錯体を新規に合成し、中性領域で無保護のアミノ酸(双性イオン型)と錯形成させ、励起子相互作用による円二色性スペクトルとその絶対構造とを比較検討したところ、アミノ酸の絶対構造を決定する方法としての潜在的能力を有することが判明した。 1.メソ位にアリール基を有するポルフィリン誘導体のガドリニウム錯体を新規に合成できた。ガドリニウムは三価であり、アキシャル位にアセチルアセトナートが配位子していた。 2.アミノ酸の水溶液とガドリニウムポルフィリン錯体の非水溶液とを撹拌することにより、アミノ酸を有機溶媒側に抽出することができ、ガドリニウムポルフィリンとアミノ酸との1:1錯体が形成された。 3.メソ位のアリール基としてオルト位に置換基を有するフェニル基を用いると錯体がほとんど形成されないことや、アキラルなポルフィリンの吸収領域において大きな円二色性スペクトルが観測されたことから、キラルなアミノ酸がガドリニウムの配位圏内に強く固定されていることが判った。 4.ほとんど全ての光学活性なアミノ酸において、錯体形成による大きなコットン効果が可視領域に見られた。このシグナルは、水溶液で見られるものと比較して、長波長シフトかつ増幅されていた。 5.アミノ酸の光学活性カラムからの溶離水溶液を、ガドリニウムポルフィリン溶液で抽出すると、円二色性スペクトルが観測され、アミノ酸の絶対構造を決定法として有用であることが判明した。
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