研究概要 |
アクチノイド及びランタノイドを体系化しているf電子の固体中での新しい知見を得、その挙動を明らかにすることを目的とした。 アクチノイドでは、ペロブスカイト型化合物KUO_3の磁化率測定において約17Kで反強磁性転移を見出したが、10Kでの中性子回折では何ら磁気的要因に基づく回折は見られなかった。これはordered momentが小さいため、中性子回折では磁気的秩序が見られないか、磁気的秩序は小さなdomainで起こっているためであることがわかった。 ランタノイド系については、BaPrO_3では11.5Kで反強磁性転移したが、SrPrO_3(BaPrO_3と同じ結晶構造を持つ)では4.2Kまで常磁性挙動を示した。結晶構造解析を行うと、BaPrO_3ではほぼ直線であったPr-O-Prの並びが、SrPrO_3では直線状から大きく逸脱し、このため酸素を介した超交換相互作用が起こりにくくなったためだと考えられる。Pr^<4+>のESRスペクトルは、反磁性体であるBaCeO_3、SrCeO_3にドープし、4.2Kで測定した。^<141>Prの核スピン(I=5/2)との相互作用による超微細構造が見られ、Pr^<4+>/BaCeO_3のスペクトルでは、許容遷移に加え、禁制遷移も測定できた。Pr^<4+>/BaCeO_3では、Pr^<4+>の周りの最近接酸素イオンによる結晶場はオクタヘドラル対称として扱え、解析により|g|=0.741,超微細結合定数A=0.0609cm^1を得た。g値は、基底状態J=5/2のГ_7状態のみから計算される-10/7の絶対値よりはるかに小さく、このことから4f電子には結晶場効果が著しく働くことがわかった。Pr^<4+>/SrCeO_3のESRスペクトルでは異方性が見られた。これはBaCeO_3と比べ、SrCeO_3の結晶ではより斜方に歪んだ構造を持つため、セリウムサイトに入るPr^<4+>の周りの最近接酸素イオンによる結晶場の対称性がオクタヘドラルから著しく歪んでいることに対応している。
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