研究概要 |
本研究では、新規の拡張構造をもつ錯体の合成を試みてきた.その目標の一つには、次元性をもつ構造を制御しながら作り出すことがあり、更にそれに基づく新規物性を発現させることにあった。具体的には適切な出発原料から比較的単純な構造の錯体を合成し、これらのself-assembleyで次元性のある構造へと導くことを計画した。その過程で、様々な金属の低次元錯体をえることが出来た. 本研究の本題である、2,2^,-dypyridyldisulfide(2-dpds)及びその誘導体を配位子にすることで、1次元ヘリカル構造、2次元ネット構造、2次元ラダー構造があり、さらに2次元ネット構造の配位子が溶液中で組み変わることにより、2-dpdsではない新たな配位子をもつ1次元鎖構造も得られた。特に興味深い点としては1次元ヘリカル無限構造は光学活性な空間群に結晶化し、それゆえ光学活性ラセンをしていることである.ピリジン環にメチル置換基を導入すると置換基の位置によって特有の構造を取ることが解り、これを用いて構造制御が可能になると思われる. [CuBr(2-dpds)]の組成を持つ錯体には2種類の構造が存在する.1つは小分子2核構造を持つ[CuBr(2-dpds)]_2である.もう一つは[CuBr(2-dpds)]_nの2次元構造である.興味深いことに前者の結晶は、固体中で光りあるいは熱によって2次元構造に変化することである.このプロセスは、両者の結晶構造の類似性から、スルフィド結合を開烈させたラジカル型で進行することが期待される.スルフィド開烈を伴う反応には更に興味深いものも存在する.スルフィドから、スルホン酸まで空気酸化が進行することが明かとなり、それによる次元構造の構築が今後更に興味をもたれる.
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