研究概要 |
ピリジンとジスルフィドを共に含む2,2'-ジピリジルジスルフィド(dpds)はその柔軟な配位構造ゆえに多様な超分子構造を取るのみならず,ジスルフィド結合の豊かな反応性によって,様々な新規構造を生み出す.この構造の基本単位は2-ピリジンチオール(pyt)であるが,これを用いると,新規d^7-d^7電子状態([Pt(pyt)_4CoX];X=Cl,Br,SCN,N3)を創出することを明らかにした. dpdsはCu(II)と反応し1次元鎖構造([CuCl_2(μ-dpds)]_nを作成する.この錯体はエタノール中で簡単に還元されて2核錯体([Cu(μ-X)(dpds)]_n;X=Cl,Br)となる.更に熱または光でポリーマー化反応が進行し,2次元構造を持つ([Cu(μ-X)(μ-dpds)]_nとなる.この反応は更にリガンド内転位反応にまで進行し最終生成物である1次元鎖,[Cu(μ-X)(2-pyrimidiumthionato(2-pyridine))]_nを与える.このような多くの中間生成物が単離可能な反応系の存在は,配位子dpdsの優れた配位性,反応性によるところが大きい. 3,4,5,6位にメチル基を導入した(n-Me-dpds(n=3,4,5,6)).3-Me-dpdsは,単核,[CuX_2(3-Me-dpds)]あるいはS-Sの開裂酸化をともなった配位超分子[Cu(3-methyl-2-sulfonatopyridine)]_nが生成した.4-Me-dpdsでは特徴のある2次元シート構造,5-Me-dpdsでは他の構造だと不安定なCu(I)2核構造,6-Me-dpdsの場合はN及びSがすべて配位に関与した[Cu_2Br_2(6-Me-dpds)]_n型1次元鎖になる.置換基を導入すると超分子構造は特定の構造のみに制限されると分かった.
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