研究概要 |
通常塩素イオン存在下でチタンの塩を加水分解結晶化したときはルチル型酸化チタンが生成され,塩素イオンのない状態ではアナタ-ス型結晶が生成される.常温では本来後者の結晶構造が安定であることが知られているが,低温安定のアナタ-ズを加熱してルチル型として結晶化した酸化チタンは,低温に下げてもアナタ-ス型に転移することはない.本研究では,水中において負の表面電荷を有する五酸化バナジウム水和物ゾルに,酸化チタン超微粒子の塩酸ゾルを接触するとアナタ-ス型酸化チタン粒子を得ることができることを見いだした.本年度は,このような相を与える他の例を(1)探索し,(2)超微粒子のサイズがこの機構に与える効果を調べることにした. (1)三酸化モリブデン,タングステン酸に対して酸化チタンのゾルを接触するとこの現象が生じるが,シリカ,ガラス,モンモリロン石等少し負に帯電しにくいものでは,この現象は生じなかった.また酸化チタンゾルを長時間放置して完全にルチル化したものを五酸化バナジュウム水和物に接触してもアナタ-スへの転移が観察された.従って,ここでの現象はルチル構造をとりやすい系でも界面の負電荷によってアナタ-ス型構造が得られることがわかった. (2)酸化チタン超粒子のサイズの影響は,その微粒子の調製段階で,ナノサイズの等方的微粒子成長に成功しなかったため、本来の目的の達成に至っていない。しかしながら,微粒子の一次元的成長という新しい問題に直面した.ここでは1nm以下の太さの繊維の三次元的展開によるマトリックスの成長が観察された.今後の実験の進展にはこのオーダーの粒子の制御された製造法の確率が不可欠であり,次年度の課題の一つとなった.
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