1. ジクロロジアルキルチタノセンの合成 初年度に長鎖アルキルをもつチタノセン前駆体の精製が困難で合成の検討課題となったが、今年度にアルキルシクロペンタジエンの段階で精製する方法を改良することにより、純粋な炭素数8のジオクチルおよび炭素数16のヘキサデシルチタノセンを合成することができた。母体のジクロロチタノセンの極性が強く、融点が高く、パラフィン系炭化水素に溶解しにくいのに対し、長鎖アルキルチタノセンは融点は著しく低下し、アルキルの長いほどパラフィンに高い溶解度を有する。浅色化するが、紫外可視部の吸収スペクトルなど分光学的挙動は、従来知られているジクロロチタノセンと類似である。 2. ジクロロチタノセン誘導体の反応性 金属還元に対する反応性は母体のジクロロチタノセンに比べて著しく低いことがわかった。ジブチルリチウムによるアルキル化で生成するジアルキル体は熱的に不安定であるが、一酸化炭素中で分解することでジカルボニル錯体を合成することができた。スペクトル的性質はジカルボニル体として説明できる。ただし母体ジカルボニルチタノセンに比べて合成条件の設定が困難で、収率が微妙に変化し、チタノセン前駆体として使用できるまでには至っていない。 3. 炭化水素媒体中の反応性 チタノセンの生成にはアルキル化に続く分解を用いる目的で、パラフィン系炭化水素中でジクロロ誘導体とジブチルリチウムとの反応を行い、時間変化を追跡した。高級炭化水素中の著しい反応抑制はパラフィン媒体中の活性種安定化の可能性を示唆している。チタノセンに相当する化学種は確認できなかったが、溶媒の選択によってアルキル鎖炭素数による反応性の差を示すと考えられる結果を得た。
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