1.ジクロロチタノセン類の合成 前年度報告の長鎖アルキルジクロロチタノセンの合成法改良によって炭素数8、12、16の一連のジクロロチタノセンを合成した。母体に比べて長鎖アルキルチタノセンの融点はアルキル鎖長とともに低下し、C8で118℃、C12で110℃、C16で106℃である。極性溶媒よりもアルカンに高い溶解度を有する。精製しやすさ、結晶性はC16が優れているが、構造解析のできる結晶は得られていない。紫外可視スペクトルはアルキル基の電子的効果で約10nm長波長シフトするが鎖長による影響は小さい。 2.長鎖アルキルチタノセン誘導体の合成と反応性 THF中でもアルキン存在下の金属還元は進行せず、低温でブチルリチウムによるジアルキル体を生成後、一酸化炭素を作用させるとジカルボニル錯体を与える。ジエニル配位子の脱離が起きやすく、母体に比べて不安定である。メチルリチウムとの反応ではジメチル誘導体を与える。光にはやや不安定であるが、大気中でも扱える比較的安定な錯体である。フェニルリチウムとは反応しにくく、対応する錯体を与えるが収率は低い。トリメチルシリルメチルリチウムとは反応しない。母体などに比べて反応性は著しく低く、長鎖アルキル基の立体的効果がみられるので、従来の複雑なアルキル置換基導入や置換基数増加による立体制御に比べて、合成が容易な長鎖アルキル導入方法は新しいメタロセン配位子の修飾法として展開が期待できる。 3.活性中間体の生成 ヘキサデカン中のジクロロ体とブチルリチウムとの反応を紫外可視スペクトルにより時間変化を追跡し、研究課題である配位不飽和錯体の生成を検討した。直ちに生ずる800nmまでのテーリングは室温24時間では吸収強度の変化がなく、40℃撹拌の条件でゆっくりと減衰する。チタノセンの生成と考えられ、現在確認中である。ジメチル体の光分解では主に配位子の脱離が起こる。
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