研究概要 |
1,11-(メタノセレナメタノ)-5H,7H-ジベンゾ[b,g][1,5]ジセレノシン(1)とオキサセレノシン同族体(2)を合成し、NOBF_4による酸化、または(1)のモノオキシドの(CF_3SO_2)_2O[Tf_2O]や濃硫酸との反応によりジカチオン(3)、(4)を生成した。(3)、(4)は、^1H,^<13>C,^<77>Se-NMRにより構造を推定した。最終的に(1)、(2)、(3)、(4)は単離精製した後、X-線結晶構造解析によりその構造を決定した。(1)はtwin-chair型、ジカチオン(3)、(4)はいずれもtwin-boat型のコンホメーションに変化しており、ジカチオンにおいてはそれぞれ中心のセレン原子が、3中心4電子セレヌランとなり、2つのセレン、セレンと酸素がそれぞれアピカルの配位子、ベンゼン環と孤立電子対がそれぞれエカトリアルの配位子となる三方両稚構造(TBP-構造)であることが判った。また、ab initio分子軌道計算により、陽電荷の内、殆どが中心のセレン原子にあり、ベンゼン環やベンジル炭素はむしろ陰電荷をもっていることが明らかとなった。サイクリックボルタンメトリーを用いた(1)の酸化還元電位、ジカチオン(3)の酸化還元電位は完全に同じ所に一つずつピークとして現れるが、それらの強度はそれぞれにおいて異なっている。波形は何回掃引しても同じであるから、(1)とジカチオン(3)はいずれも酸化還元によっても分子は分解しないことを示しており、(1)→(3)への酸化、(3)(1)への還元は可逆的であり、ラジカルカチオンを中間体とする“分子ヒステリシス"の性質を示すものと考えられる。 次に、1、8-ジ-(8-フェニルセレナナフチルセレノ)ナフタレンを合成し、NOPF_6を用いた酸化反応によりビスセレヌラン、テトラセレナテトラカチオンの発生を試みた。
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