細胞増殖抑制因子としてのGnRH生理活性の発現機構に関する研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09874173
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 朴 民根 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (00228694)
• キーワード: GnRH / GnRH受容体 / 閉鎖卵胞 / 下垂体 / 生殖腺 / 副腎 / 細胞増殖抑制因子 / 分化

研究概要

細胞増殖抑制因子としてのGnRHの生理活性の発現機構を解明する本研究の目的を達成するために、平成9年度に以下の実験を行った。
1.卵胞閉鎖過程における顆粒膜細胞の内分泌学的性質の変化とGnRH受容体の発現:
下垂体除去未成熟ラットを用い、卵巣におけるGnRH受容体mRNAの発現に対する各種ホルモン(testosterone、DES,PMSG,hCG,GnRHアゴニスト/アンタゴニスト)の影響を調べた。GnRH投与により、内莢膜細胞でのLH受容体mRNAの発現が劇的に減少することがわかった。本結果は学会で発表した。
2.GnRH受容体発現細胞株の確立:
CHO細胞を用いて、GnRH受容体の発現を自由に調節できる細胞株を作成しているところである。pOPRSVI vectorで形質変換を起こし、現在GnRH受容体発現を調節する能力の大きい細胞株を選別している。
また、下垂体細胞株(RC4B)はゴナドトロピン産成細胞にも分化することができ、GnRH受容体も発現できることから、ゴナドトロピン産成細胞の分化マーカーを導入することにした。LHβのプロモータで蛍光タンパク質から発現されるvectorを作成し、形質変換を行った。現在形質変換株で蛍光タンパク質がLH産成細胞の分化マーカーとして機能しているかを調べている。今後、この細胞株にGnRH受容体を発現させ、GnRH受容体の発現がゴナドトロピン産成細胞の分化・増殖にどのような生理作用をもっているのかを調べる予定である。
3.生体内GnRH受容体発現部位の検索:
正常ラットでGnRH受容体が発現している器官をPCR法で調べた結果、下垂体、卵巣以外に副腎でも大量のmRNAが発現されていることがわかった。現在、GnRH受容体に対する単クローン抗体を作成し、GnRH受容体を発現する部位を特定している。

研究成果

• [文献書誌] Akazome,Y.et al.: "Ontogeny of the expression of messenger ribonucleic acid encoding lutropin receptor in chicken embryo." Zoological Sciences. 14・2. 363-367 (1997)
• [文献書誌] Mochizuki,Y.et al.: "Formation of lipofuscin-like autofluorescent materials in NG108-15 cells : involvement of lysosomal protein degradation." Gerontology. 44・1. 1-8 (1998)
• [文献書誌] Park,M.K.et al.: "Characteristics of the N-terminal extracellular domain of avian and reptilian gonadotropin receptors ; Evolutionaly aspects." Perspectives in Avian Endocrinology (Ed by S.Harvey and R.J.Etches),J.Endocrinol.Ltd.,Bristol. 213-223 (1997)
• [文献書誌] Park,M.K.et al.: "Molecular heterogeneity of the gonadotropin signaling system." Advances in Comparative Endocrinology (Ed by Kawashima S.and Kikuyama S.),Monduzzi Editore,Bologna. 823-828 (1997)
• [文献書誌] Iizuka,A.et al.: "Expression of LH receptor mRNA after disruption of spermatogenesis." Advances in Comparative Endocrinology (Ed by Kawashima S.and Kikuyama S.),Monduzzi Editore,Bologna. 847-851 (1997)
• [文献書誌] Iizuka,A.et al.: "Degeneration of seminiferous epithelium alters composition of the transcripts for luteinizing hormone receptor in adult rat testis." Zoological Sciences. (印刷中).