分裂準備帯は分裂面の挿入位置決定に必要な細胞質分裂装置である。分裂準備帯は、組織の中にある細胞で重要であり、単離したものでは出現しても、その機能を果たさないことがある。そのため、有機的に構築された細胞集団での分裂準備帯の研究は必要であり、分裂準備帯の細胞モデルができれば、分裂準備帯の分子機構の解明を飛躍的に進歩させられる可能性がある。そこで本研究では、分裂組織を数層の細胞からなるシートにし、そこで分裂を起こさせる条件を検討し、次にこのシートから分裂準備帯を機能を保ったまま細胞膜をこわした細胞モデルを作製することが可能かどうか検討することを目的に研究を行った。まず、タマネギ根端分裂組織を材料として細胞モデル構築を試みた。本研究費で購入した2種のマイクロスライサ-で根端を50-200umの厚さの縦断切片を作製し、この切片で細胞分裂が進行できる条件について検討した。その結果、スライスした組織で細胞分裂の観察が可能になった。しかし、根端0.5mm以下にスライスされた場合10分以内に分裂準備帯も含めてすべての表層微小管が消失することが分かった。そこで、現在微小管安定溶液にdetergentとtaxolを入れた溶液下で直接組織をスライスし、細胞モデルを作る条件を検討している。根端分裂組織では、スライスしたもので分裂準備帯をうまく残すことに問題があったので、気孔分化に関係する細胞分裂が見られる表皮についても検討することにした。タマネギ表皮では、従来孔辺母細胞の分裂はスライスした表皮でも観察できたが、不等分裂を進行させることはできなかった。本研究でスライスした組織で不等分裂を進行できる条件が見つかったので、将来はこれを使ったモデル作製も試みたい。
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