研究概要 |
分離細胞骨格に結合する可溶性成分を同定するために、アクチン、中間径線維を中心に免疫吸着体の調製法を検討し、免疫沈殿の対象とする分子が、構造を保ったまま分離沈殿させることが可能な方法を確立した。このため、免疫吸着体は遠心分離を使用せずに対象とする免疫吸着体に結合した抗原抗体産物を分離することが必要である。この目的のため、ガラスビーズ、アクリル樹脂、ニトロセルロース紙を担体として検討した。抗体と担体の結合には化学架橋試薬(グルタアルデヒド,EDC、スベルイミド)を使用した。検討した条件下では、アクリルアミドゲルに抗体をEDC架橋した吸着体、アクリル樹脂を活性化後抗体をEDCまたはスベルイミドで架橋した免疫吸着体が今回の実験には非特異的な吸着も少なく有用であった。また、タンパク質をドットブロットしたニトロセルロース膜も簡便なサーベイには有効であった。 上記の方法を用いて、ニワトリ胸筋培養細胞及び筋原綿維の可溶性分画から、デスミンを含む構造体の分離を試みた。筋に特異的な中間径線維デスミンは筋原線維の外周を包む3次元網目構造を形成しているが、ホモゲナイズ等の機械的刺激で筋原線維より遊離して可溶性分画に検出される。この可溶性分画を抗デスミン抗体-アクリル樹脂免疫吸着体と反応させてデスミン線維と共存する分子種の同定を行った。骨格筋の可溶性分画はフォスフォリラーゼ、クレアチンカイネースを中心に10種以上のタンパク質が含まれ、デスミン量は総可溶性成分の2%以下である。この分画からデスミン免疫吸着体によりデスミン(MW 52k)のほか、分子量25kと分200kのタンパク質が分離された。これらの成分が、中間径線維を筋のZ-線につなぐsnapping proteinであるかを現在検討中である。さらに、アルドラーゼを指標として、アクチン免疫吸着体と共沈する分画の同定を行っている。
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