研究概要 |
本研究の目的は自由飛翔中のオオスズメバチに無線トランスミッターを取り付け、飛翔中および学習した図形の選択時の脳の活動を記録しようとするものである。この研究には3つの萌芽的試みが含まれる。第1はスズメバチを材料とすることの妥当性の検討、第2はスズメバチが実験動物になりうるかの検討、第3は無線トランスミッターの開発である。これらの経過は以下の通りである。 1,ミツバチを対象とした図形学習や視覚的記憶を手掛りとした餌場と巣の往復飛行は多数の報告がある。類似の行動様式をもつ他の膜翅目(ハチ類)昆虫を対象とした研究は少ない。本研究では、オオスズメバチがミツバチと同等の図形識別と学習能力を有することを明らかにした。さらに、スズメバチは状況に応じて運動系の記憶視覚的記憶を利用して飛翔コースを決定することが明らかになった。 2,スズメバチは地下に巣を作り、攻撃性が強いため、実験対象として問題が多いと考えられていた。しかし、その習性を理解すれば、実験動物として、危険性が高くはないことが明らかになった。本年度はスズメバチにビニール製の吹き流しを取り付け観察を行ったが、その重量が500mgまでは飛翔を紡げないことを確認した。オオスズメバチの体重は1グラム以上であり、本研究では使用予定の200mgの無線トランスミッターの装着には問題がないことを確認した。 3,無線トランスミッターについてはすでに200mgの重量の超小型のものが報告されている。これは飛翔中のバッタの筋電図記録に使用されている本研究では筋電位より微弱な脳のニューロン活動を転送するため、微小なオペアンプ等を組み合わせ増巾することを検討中である。 4,行動に伴う脳の活動は直径20μm銅線を脳に刺入し、ケージ内で飛翔中のスズメバチから細胞外記録が、可能であることを確認した。
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