研究課題/領域番号 |
09874181
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
小泉 修 福岡女子大学, 人間環境学部, 教授 (50094777)
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研究分担者 |
美濃部 純子 福岡女子大学, 人間環境学部, 助手 (80190718)
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キーワード | 散在神経系 / ヒドラ / 神経伝達物質 / ペプチド / アセチルコリン / モノアミン / 神経生物学 / 進化 |
研究概要 |
1。ヒドラの散在神経系における神経伝達物質としてのペプチドの役割:ヒドラのペプチド性シグナル分子の大規模スクリーニングのプロジェクトの進行により、数種の神経ペプチドを同定した。まず、338種のペプチドを分離し、222種のペプチドのアミノ酸配列を決定、32種のペプチドの化学合成を行い抽出物との同一性を確認の後、この大量の合成ペプチドを用いて、機能解析を行った。その中で、神経関連の活性を持つ物について、抗体作製を行った。そうして、神経細胞に局在することが確認された、ペプチドが数種同定されたわけである。 (1)まず、C末にGLWamideの共通配列を持つ7種のメンバーよりなるLWaペプチドファミリーである。これは、ヒドラの括約筋、イソギンチャクきんの括約筋の収縮を引き起こし、両種とも、神経細胞に局在する。 (2)Hym176と呼ぶペプチドで、ヒドラの内胚葉の筋肉の収縮を引き起こし、神経細胞に局在する。更に、このペプチドの前駆蛋白のmRNAの全長をクローニングした。その結果、前駆蛋白の中に、たった1つのHym176ペプチドが含まれていた。このペプチドについては、遺伝子・分子・機能・局在まで全て明らかになり、ヒドラの散在神経系におけるペプチドの役割を実証した例と言える。 (3)Hym355と呼ぶペプチドは、ヒドラの神経細胞の分化を促進する、神経発生的な活性をもっていた。このペプチドも神経細胞に局在していた。ヒドラの散在神経系の場合、発生活性物質が神経ペプチドとして、機能していることが判明した。 さらに、RFamideとバソプレッシンの抗体の5種の神経ペプチドの抗体を用いて、ヒドラの神経網のChemical anatomyを行った。その結果、ヒドラの感覚細胞は、各部位で均一集団で、神経節細胞はペプチドの表現型に関して、雑多な集団からなることが判明した。 2。ヒドラの散在神経系における古典的伝達物質の存在・機能についての検討:合成酵素の測定・各種免疫染色・ヒドラの抽出液の数種の生物検定系にたいする作用・ヒドラとイソギンチャクに対する古典的伝達物質の効果など全ての検討は、ヒドラの神経網においてアセチルコリン・アドレナリン・ノルアドレナリン・セロトニン等の古典的伝達物質が機能している事を示す証拠は得られなかった。言い換えれば、全て否定的な結果であった。 この結果、我々は、ますます、「神経伝達物質の起源はペプチドである」との考えを強くした。
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